EDLPとは?言葉の意味、メリット・デメリット、成功のコツを詳しく解説!
EDLPという言葉の意味をご存知ですか?EDLPとは、Every Day Low Price(エブリデイ・ロー・プライス)の略で、その名の通り「毎日安い」を売りにする価格戦略です。消費者目線で見れば毎日お安く商品が手に入るのは嬉しいですが、その経営はどのようにして支えられているのでしょうか?また、その経営方式には何かデメリットはあるのでしょうか?今回の記事では、価格政策としてのEDLP政策に様々な角度から迫っていきます。

目 次
EDLP戦略とは

EDLPとは、原則的に価格を変えず、低価格で商品を販売する価格戦略のことを指します。EDLPを導入している店舗では平均的にどの商品も安いことが特徴です。そのため、来店時に複数商品を購入した際に、トータルで見れば他店で購入するより安くなることが多いです。
なお、特売日を設けるなど価格変更を前提とした価格戦略はHi-Lo戦略(HILO)と呼ばれます。これはEDLP戦略と対称的で、値下げしている間の買い上げ点数増加と売上アップを狙うものです。ただし、訴求期間が終わると元の価格に戻ってしまうことから、価格が通常に戻ると購入されなくなる、需要の先取りをしてしまっているという指摘もあります。
HILO(ハイアンドロー)との違い
EDLPの対局となる戦略に「High-Low Price」略称HILOと呼ばれるマーケティングがあります。これは特定時間に価格を大幅に変動することで、商品に特売品や期間限定品としての付加価値を設定し、集客する戦略です。
目玉商品をフックに集客し、ついで買いや衝動買いによってほかの商品の購入を促す効果が期待できます。
HILOのメリットとして、高い集客力と一時的な売り上げ増加があげられます。デメリットは顧客が定価購入を控える傾向に移ることで発生する売上低迷です。
頻繁な価格変更は対応作業によるコスト増大や顧客の特売慣れなどを引き起こすため、ブランドイメージの低下につながる可能性もあります。
EDLPのメリット
EDLP戦略が持つメリットを、導入店舗側と利用者側の2つの視点から説明していきます。
導入店舗のメリット
EDLPを導入した店舗に期待できるメリットとして、以下の4つが挙げられます。
- 売上予測が立てやすく、適正在庫を実現しやすい
- オペレーションコストを削減できる
- 特売チラシが不要になるなど、広告コストが減る
- 「通常価格でもお得」が定着すれば、固定客の獲得に繋がる
価格変動がないEDLPを導入することで、売上予測が立てやすくなります。そのため、在庫過多や在庫切れになることがなく、適正在庫を実現しやすくなるでしょう。また、価格変動に伴う値札の張り替えやレイアウト変更などの作業が不要となるため、店舗のオペレーションコストを削減できます。また、特売日限定のチラシなどを作る必要がなくなるため、広告にかけるコストも削減できます。
さらに、EDLPの大きなメリットとして「リピーターの獲得」が挙げられます。通常価格でもいつもお得だと消費者に認識されれば、「いつ利用しても安く買える店」として競合店舗と差別化ができ、ロイヤルティの高いリピーターの獲得につなげることができるのです。
消費者のメリット
また、EDLP店舗を利用する消費者側のメリットとしては、以下の3つが挙げられます。
- いつでも安く買える安心感が得られる
- 特売日を計算して買い物しなくてもよくなるため、計画の手間が省ける
- ワンストップで買い物ができるため、時短につながる
EDLP導入店舗では、いつでも商品を安い価格で安定して販売しているため、消費者側にとっても「この店舗で買い物をすればお得」という安心感が生まれます。消費者は、このEDLP戦略に対する安心感や信頼感からリピーターとなり、店舗側と長期的な関係性が築けるようになるのです。
また、EDLP戦略を取る店舗で買い物をすると、わざわざ特売日を計算して買い物をする必要がないため買い物の手間が省けるのも、消費者にとっての大きなメリットです。また、特売日に合わせて日々のメニューを綿密に計画するのは、台所を預かる人にとって大きな手間になります。その点、EDLP戦略の店舗を利用すれば「低価格での購入」と「その日の気分に応じた購入」を両立できます。
最後に、特売日などを展開する店舗をいくつも回ることになると、買い物に非常に時間がかかるのが難点です。しかし、EDLP戦略をとる店舗で買い物をすれば、いくつもの店舗を回ることなくワンストップで買い物ができ、買い物の時短を実現できます。
EDLPのデメリット
メリットの多いEDLPですが、デメリットもあります。ここでは、導入店舗のデメリットと消費者のデメリットに分けて解説します。
導入店舗のデメリット
EDLPを導入する店舗のデメリットとして、以下の3つが挙げられます。
- 特売期間による売上ブーストがないため、短期間での爆発的な売上増が難しい
- ローコスト経営等の経営効率化が必要なため、一定以上の事業者規模が必要
- HILO戦略からの乗り換えが難しい
特売期間は店舗にとってはかき入れどきであり、一時的にでも売上を伸ばしたい、集客率を上げたいというときに役立ちます。EDLP戦略ではこの手法が使えないことから、爆発的に売上や集客率を上げることが難しいケースがあります。
また、EDLP戦略を実現するためには、ローコスト経営など経営効率化が必須です。ただ、経営効率を上げるためには、規模の経済を利用できる、仕入れ先に対して強い交渉力があるなど、一定の事業者規模が必要となるケースが大半です。そのため、小規模経営のスーパーマーケットでのEDLP戦略の採用は難しいかもしれません。
さらに、EDLP戦略は顧客と長期的な関係性を築くことでリピーターを増やし、結果的に売上増を目指すという手法であるため、HILO戦略から乗り換えてもすぐに売上増を達成できるとは限りません。なお、EDLPを採用すれば必然的に価格・粗利率を下げることになるため、一時的に収益が悪化しやすいという側面があることにも留意が必要でしょう。
消費者のデメリット
消費者側から見たとき、EDLPは全体最適に適していますが、局所最適には適していません。つまり、ある一つの商品だけを見たとき、EDLP店での販売価格が他店での特売価格と比べて高いケースがあります。そのため、ある一つの商品だけを見れば、EDLP店での購入は必ずしもベストな選択とは言い切れません。
また、EDLP店では多くの商品が安いため、元々想定していなかったものを買ってしまう可能性もあります。この特性は、自分では想定していなかった価値に出会える可能性を広げるとも言えますが、お財布の紐が緩みやすくなるとも言えるため、考え方次第ではデメリットになるかもしれません。
EDLPを成功させるコツ

最後に、EDLP戦略を成功させるコツを3つご紹介します。
ローコスト経営の徹底
EDLPを実現するためには、まずローコスト経営を徹底する必要があります。そのためには徹底したコスト削減、仕入れ価格の交渉、サプライチェーンの最適化などが求められます。また、店舗におけるオペレーションを標準化したり、DX化で人件費を削減したりする先行投資も考慮しましょう。
集客施策の工夫
EDLPでは特売日やそれに伴う広告を打ち出さなくなることから、集客で苦戦することもあります。対応策としては新聞の折込広告が一般的ですが、近年では十分な費用対効果が見込めないこともあります。そこで、インターネットを活用したWebマーケティングや、店舗アプリでセール情報やポイント情報を配信したりするのもおすすめです。また、EDLPのビジネスモデルでは顧客ロイヤルティが重要になるため、店舗内スペースを活用して何かしらのイベントを開催するなど、店舗と消費者との距離を近づけるための取り組みをするのも良いでしょう。
買い上げ点数を増やす工夫
EDLPで効果的に売上を上げるためには、商品の購入点数を増やすことが重要です。なお、人気商品や日配品などを安価で販売できるのがEDLPの強みであるため、これらを主力商品として関連商品を同時に購入してもらうクロスマーチャンダイジングなどの考え方が有効だと考えられます。
クロスマーチャンダイジングのやり方については、以下の記事で詳しくご紹介しています。
「クロスマーチャンダイジングのメリットや手順、事例をご紹介」
PB(プライベートブランド)を活用する
自社ブランド商品、つまりPBをNBと入れ替えれば、EDLPの顧客層が重視するコストパフォーマンスを強化できます。PBはNBよりもブランディングやマーケティングをはじめとした各種コストを抑えることで、高品質かつ安価に販売できる商品です。
この特性を活かして値段に対して高い品質のPBを提供できれば、顧客満足度と粗利を両立できます。また、PBが有名になればそれを目玉商品として扱うことによる集客も可能です。
このことから、高品質なPBはEDLP戦略を成功につなげるポイントといえます。
【関連記事】
PBとNB。その意味やメリット・デメリット、スーパーでの活用法などをご紹介!
シンプルな商品構成を意識する
たくさんの商品を品出しし、それに合わせて値札変更する作業は、オペレーションコストを増やすだけでなくEDLP戦略においても不適切です。
顧客の多くはいつも購入している定番商品を低価格で購入することを目的に来店するため、EDLP戦略をとる場合はよく売れる商品に絞り込んで構成しましょう。
また、商品を絞り込めば、仕入先との価格競争を有利に進める効果も期待できます。EDLPは安定した売上を見込める戦略でもあるため、ひとつの商品を長期間かつ多く仕入れる交渉が可能です。
戦略のメリットを最大限に活かすためにも、自社が取り扱っている商品の売り上げや価格には普段以上に精密に分析しましょう。また、それを活かしたシンプルな商品構成を意識するのも重要なポイントです。
EDLPの成功事例
次に、EDLPを導入・成功した事例について解説します。
業務スーパー
業務スーパーは神戸物産グループの製造一体体勢を基盤に、EDLPをコンセプトに運営するスーパーマーケットです。
輸入品や飲食店などで利用されている大容量冷凍食品・PB商品などを扱っているのが特徴で、決まった曜日に特売日を設ける形でEDLPを取り入れています。
EDLP導入による安定した集客を実現するだけでなく、広告費を最小限に抑えることで、消費者がいつでもどの店舗でも最適な値段で買い物ができる体験を提供しています。
出典:業務スーパー
DAISOをはじめとした100円ショップ
DAISOをはじめとした100円均一ショップは、EDLPの代表的な事例です。常に均一価格で商品を提供することで、顧客は時間や場所を問わず安い商品を購入できます。
このほか、以下のメリットを享受できるのも100円ショップの特徴です。
- 大量仕入れによる大量販売
- 人件費削減
- 広告費削減
DAISOはこれらのメリットに加えて上位商品を100円商品とともに陳列・販売して購入単価を高める戦略をとっています。
このほかの100円ショップでは、ビューティーなどの特定ジャンルにこだわりを見せる・期間限定のコラボグッズの導入などの手法がとられています。
現在はありふれた小売店のひとつとして認知されている100円ショップですが、さまざまなアイデアや戦略で競合他社との差別化や集客を実現しています。EDLP戦略を打ち出す際は、100円ショップの事例を参考にするといいでしょう。
出典:DAISO
EDLPでリピーターと売上を確保しよう
EDLPとは、多くの商品を低価格で販売することでリピーターを獲得し、売上アップにつなげる経営戦略。特売日などを設けるHILO戦略と比べて売上予測が立てやすい、オペレーションコストを削減しやすいなどのメリットがあります。
反面、その導入には一定の事業者規模が必要、爆発的な売上増が実現しにくいなどのデメリットもあります。
今回ご紹介した成功のコツを考慮しながら、自店舗にはEDLPとHILO、どちらの戦略が合っているのか検討してみてはいかがでしょうか。






