店頭販促とは?基本の考え方と目的、方法について知ろう
近年では新型コロナウイルスの流行やインターネット通販サイトなどの台頭により、スーパーマーケットの実店舗を利用する人が減少傾向にあります。そんな中で実店舗の魅力をアピールし、足を運んでくれる人を増やすためには、実店舗ならではの「店頭販促」という考え方が必要です。
そこで、今回は店頭販促の基本的な考え方や必要性、目的と方法をご紹介します。

目 次
店頭販促とは?
では、店頭販促とはどんなことを指すのでしょうか。まずは、基本的な意味と必要性について確認しましょう。
店頭販促の意味
店頭販促とは、実店舗において「商品を購入したい」という気持ち(購買意欲)をかき立てるための活動のことで、「インストアプロモーション」とも呼ばれます。来店してもらうための施策ではなく、主に購買金額アップ(購入率や客単価)が目的の施策です。
そもそも、実店舗での販促活動としては、主に以下の3つがあります。
- 集客…顧客の来店率を上げる
- 購入率アップ…来店した顧客が商品を購入する確率を上げる
- 客単価アップ…購入点数や購入金額を上げる
このうち、集客に関しては店舗外でのDM、チラシ、Web広告などで行うもので、店頭販促には含まれません。店頭販促とは、来店してもらった顧客に対して購買意欲を上げるものだからです。つまり、最終的に商品を購入してもらうことが目的であることを忘れないようにしましょう。
なぜ店頭販促が必要なのか
商品やサービスは、置かれているだけでは売り上げアップにつながりません。特に、スーパーマーケットで買うものは生活必需品、日用品ばかりなため、「いつもの買い物」だけして帰ろうという人も多いです。つまり、購入率や客単価を上げるためには、「今、この商品がほしい」と思わせる工夫が必要だと考えられます。これが「店頭販促」です。
店頭販促を考えるにあたって、販促に関連する「4C」と「4P」をおさらいしておきましょう。
4C:消費者が商品を購入するときの判断基準
- Customer Value(価値)
- Customer Cost(消費者にかかるコスト)
- Convenience(利便性)
- Communication(対話)
4P:「4C」に対し、売り手側が対応すべき事由
- Product(何を売るか)
- Price(いくらにするか)
- Place(どうやって流通させるか)
- Promotion(どのように宣伝するか)
特に、売り手側の事由である「4P」はどの視点が欠けていても消費者に響かない、商品の価値が伝わらないとされています。このうち店頭販促は「インストア・プロモーション」と言われるとおり、どのように宣伝するか、の部分に当たります。
「Price=価格訴求」やチラシなど、いわゆる「アウトストア・プロモーション」は密集につながるため、新型コロナウイルス感染症の流行以降は避けられる傾向にあります。そこで、来店した顧客に対して購買意欲を刺激する「店頭販促」が再び注目を集めているのです。
店頭販促の目的

店頭販促の目的は、前述のように「購入率アップ」と「客単価アップ」の2つがあります。
購入率アップ
ふらりと立ち寄った顧客に対して、購入確率を上げることを指します。店舗に立ち寄る消費者は、購入するものを決めている人ばかりとは限りません。中には商品を購入するかどうかも決めず、ふと立ち寄る消費者もいます。こうした消費者が思わず商品を購入したくなるよう、店頭販促によって商品をアピールするというわけです。
つまり、購入率がアップするということは、店舗が販売活動を行った成果でもあります。来店した人のうち70%が商品を購入していた店舗で、店頭販促の結果、80%が商品を購入するようになったのであれば、購入率アップに貢献できたと考えられます。すなわち、もともと購入するつもりがなくても購入したくなるような店頭販促ができた、と言えるでしょう。
客単価アップ
来店後、店舗内で商品を見たときに思わず買いたくなるような工夫をすることで、客単価を上げることができます。これは購入率アップとはやや異なり、もともと商品を購入するつもりで来店した人に対し、購入点数や金額をアップする工夫のことです。
店内レイアウト、陳列方法、ポップなどを工夫し、視認性を高めたり滞在時間を伸ばしたりすることが、客単価アップにつながります。ポイントは、その商品を購入したことによるメリットや効果を簡潔にわかりやすく伝え、購入に至る動機づけをすることです。
購入目的以外の商品の「ついで買い」を促進することも重要です。これはレジ横のガムや乾電池、ゴミ袋などが該当します。野菜の横に鍋つゆ、など、関連商品とのセット売りも良いでしょう。
集客率アップ
顧客に店舗や商品を認知してもらい集客を促すのも、店舗販促の目的です。
企業や店舗の存在だけでなく、イベントやセール情報・PBなどがあればその宣伝も行わなくてはなりません。企業や店舗の認知度向上は、顧客の購買意欲向上にも深く関係します。
店舗販促の効果を最大限に引き出すポイント
店舗販促の目的を達成し、販促物の効果を最大限に引き出すには、実施前におさえておくべきポイントがあります。店舗販促の効果を最大限に引き出すポイントを解説します。
顧客の導線を意識する
販促において重要なのが、顧客の導線を意識することです。顧客が店舗を見つけたとき、どこに視線を送りながら店内に入るのか、店内でどのように動くかを意識しましょう。
顧客の購買体験を具体的に意識すれば、販促物の選択や位置も自然に効果的なものを選べるようになります。顧客の目や足を止めるポイントに合わせ、それぞれ効果的な販促を置けるようになれば、その効果をより高められるでしょう。
デザインや内容はアピールポイントを明確に
販促は店舗が何を販売しているのか、商品にどのような効果があるのかを伝えるためのツールです。以下の内容は一目で分かるようなものを心がけなくてはなりません。
- デザイン
- 販促物に掲載している内容
- 顧客へのアピールポイント
顧客が一目で受け取れる情報は限りがあるため、販促物に込める情報は厳選しましょう。また、商品の効果だけでなく、購入したときにどんなメリットが得られるかを明確にすることも大切です。
ターゲット像を明確にする
店頭販促を最大限に活かすには、ターゲットとなる顧客の属性を明確にすることが大切です。ターゲティングした顧客がどのような情報を求めているかをしっかり把握しましょう。
例えば、美容や健康に高い関心を持つ女性をターゲティングした場合、栄養素が持つ健康・美容効果を訴求できるような店頭販促を設置します。
また、同じ女性でも子どもがいる年代・属性の方をターゲットとする場合、女性だけでなく子供にもわかりやすい販促が有効です。具体的には、おやつ売り場などにあるカラフルでひらがなを中心に構成されたPOPなどが該当します。
スーパーマーケットの場合、さまざまな属性の顧客が来店するため、このターゲティングをいかに適切に行うかで店頭販促の成果が変化します。より詳しい内容を知りたい方は、以下の記事も参考にしてください。
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スーパーの客層は変化している!?ターゲット層へのおすすめアプローチとは
デジタルマーケティングと連携する
現在、多くの人がスマートフォンを用いてオンライン上の情報を収集しています。これは顧客の購買活動にも影響を与えており、店舗などのオフライン場だけでなく、ネットショップなどのオンライン上での購入も可能となりました。
便利な一方、さまざまな情報が手に入る環境から、顧客は商品をただ単に購入するだけでは満足感を得にくくなりました。
この状況を打破するには、オフライン・オンラインのどちらか片方のみのマーケティングでは不十分です。成功するには、両方を融合させたOMOマーケティングが求められています。
これは店頭販促においても例外ではありません。販促やそれに関する施策を検討する際は、店舗などのオフライン環境だけでなくオンラインでのアプローチも検討しましょう。
以下の記事では、OMOマーケティングについてより詳しく解説しています。こちらも参考にしてください。
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OMOマーケティングとは?成功の秘訣と事例を紹介!
効果測定も欠かさず行う
店舗販促を実施する際は実施後の効果測定も大切です。店舗販促の手法やツールは複数あるうえに、企業や店舗ごとの相性も異なります。効果的な方法やツールはある程度分析できるものの、確実な効果は実践しない限り分かりません。
そこで、販促を実施する前に、以下の情報をあらかじめ管理しておきましょう。各アイテムごとに以下を管理することで、より正確な効果を測定できます。
- 売上
- 販促を利用した場所や期間
- デザイン
分析の際は、効果のあったまたはなかったもの・むしろ低下したものに分けて行いましょう。それぞれの原因が分かれば、企業や店舗の成功パターンを導き出せます。
店頭販促の方法
店頭販促の方法はさまざまですが、ここではよく行われるポップやのぼり、ポスターのほか、商品陳列の工夫についてご紹介します。
ポップ

ポップは省スペースかつ手軽に行える施策の一つで、新商品やお得な商品の情報、商品の特徴や魅力などを説明します。特に、手書きの店頭POPは温かみや親近感を与えやすいため、興味を引かれて立ち止まる人も多いです。価格を記載すればプライスカードになりますし、商品の特徴やポイントを解説するだけでなく、従業員によるコメントなどがあると親しみやすさアップにつながるでしょう。
ポップを作るときは、読みやすさを重視しましょう。字がきれいかよりも、文字の太さを均一にしたり、遠くでも読める大きさで書いたりする工夫で見やすいポップが作れます。また、明るい背景に赤や黒の文字で書くと読みやすく目に止まりやすいので、カラーリングにも気をつけましょう。
実際に商品周りにポップを置き、どんなデザインやフォントが目立って読みやすくなるか、試してみるのがおすすめです。
モニターPOPやデジタルサイネージ
モニターに映像を流すモニターPOPや、電子表示器で情報を発信できるデジタルサイネージも、店舗販促に有効なツールです。
これらの電子販促物は、デザインや文字だけでなく音声や動画で店舗または商品をアピールできます。従来の販促物にはない形で顧客の五感を刺激することで、販促対象をより印象付けられるでしょう。
また、デジタルサイネージは店頭や店舗内はもちろん、屋外や公共の場・交通機関でも活用できます。店外にいる見込み客を引き込めるのは、デジタルサイネージならではの魅力です。
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商品陳列
商品陳列にひと工夫加えることで、店頭販促の一環とする手法もあります。
○エンド売り場
新・旬・トレンド商品の購入を促し、中通路にお客さんを引き込む陳列手法。エンド売り場はテーマ性が高く定期的な売り場変更も行うため、エンド売り場の商品は購買促進につながりやすい特徴があります。
○インパクトある陳列方法
ジャンブル陳列・ウイング陳列・フック陳列など。激安商品に使いやすいジャンブル陳列、ついで買いを促進しやすいウイング陳列、アイデアを活かしやすいフック陳列など、さまざまな陳列で購買意欲を高められます。
売り場の陳列方法については、こちらの記事も参考にしてください。
「スーパーの売り場にはどんな工夫がされている?効果的なディスプレイとは」
什器
商品陳列を作る重要要素のひとつが、什器です。什器は商品を陳列・設置するために必要な器具・機材全般を指します。スーパーマーケットで使われているラックや棚なども、什器の一種です。
什器は企業や店舗・商品のイメージを分かりやすく伝えるのに使われる要素でもあります。
例えば、什器の形と色を落ち着いたデザインでまとめることで、店舗内の雰囲気に高級感を付与できます。
また、子ども向けお菓子などの場合、小さい子どもでも取りやすくカラフルな什器を使えば、ターゲット層である子どもとその保護者へ商品をアピールできるでしょう。
商品陳列にこだわりたい場合、配置だけでなく什器にもこだわることで陳列の効果を補強できます。
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のぼりやポスター
のぼり:棒に縦長の布を付けた表示物で、屋外での販促ツールとしてよく使われます。ミニサイズのものは商品の近くやレジ横に設置されることも多く、視界に入りやすいのが特徴です。
ポスター:店舗の壁や街頭に貼ることで、多くの人に情報を伝えられます。作成が簡単で設置も容易なため、季節・期間限定の情報、キャンペーン情報など入れ替わりやすい情報を伝えるのに使いやすいでしょう。
サンプリング
店頭でのサンプリングも販促ツールの一種です。無料で試供品を配布することで、顧客に商品の魅力を直接伝えることができます。例えばドリンクの試飲コーナーなどがこれに当たります。
触感や味などを広告やディスプレイだけで伝えるのは非常に困難です。商品には、実際に使用しないと分からない魅力もあります。
サンプリングを使用してもらえば、ほかの販促では伝えにくい魅力もしっかりと伝えられます。また、使用中やそのあとの感想を元にコミュニケーションすることで、自社への愛着を育てることも可能です。
サンプリングは購買意欲を刺激するだけでなく、顧客のファン化にも役立ちます。
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店内ディスプレイの工夫
店内のディスプレイを工夫して顧客の興味を引くのも店頭販促の一部です。目を引くデザインや商品をより魅力的に見せた陳列は、それだけで店舗の前を歩く人の興味や購買意欲を刺激します。
またディスプレイは、入店前の顧客に店内の雰囲気を伝える手段としても機能します。スーパーの場合、カラフルで可愛らしい商品を店頭や店外に向けて陳列すれば、子どものいる世帯の入店促進に役立ちます。
効果的なディスプレイを打ち出したいなら、自社や展示する商品のターゲット層が好むデザインを意識しましょう。同じ商品でも陳列や配置で印象は大きく変わります。
どんな人に自社の顧客になってほしいか、そのためにはどんなディスプレイを構築すべきか、よく考えたうえで活用しましょう。
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店頭販促の成功事例
次は店頭販促を利用して成功した事例をご紹介します。自社で採用する施策を検討する際にお役立てください。
アイセイ薬局
アイセイ薬局は、什器を活用して健康にまつわる情報を発信しつつ、関連商品を取り扱う企画販促を実施・成功した事例です。
什器を用いた情報発信を元に患者と円滑なコミュニケーションを取れるようになり、他店との差別化に成功しました。
ただ什器を並べるのではなく、情報を追加することで他店との差別化に成功した事例といえます。店頭販促は、ただ什器やその配置にこだわればいいわけではありません。
顧客とのコミュニケーションやどのアプローチにつながるかも、販促を活用する際には考える必要があります。
事例URL:https://service.pxc.co.jp/case-study/casestudy3/
キリンビバレッジ
商品POPの好事例としては、キリンビバレッジのAIを用いたPOPがあります。
キリンビバレッジは販促のマンネリ打破を狙い、SNS投稿から消費者の行動や感情をAIに自動分析させ、その結果をデザインに活かしたPOPを発表しました。
このPOPにより、効率的かつ効果的に消費者に響く訴求やデザインを活かした販促物の制作に成功します。
AIを利用したPOPはその効果だけでなく、従来なら数か月かかっていた作業を約1か月まで短縮するなど、発表までの流れの短縮化も実現しました。活用できる技術を積極的に取り入れたことで成功した事例といえます。
事例URL:https://service.pxc.co.jp/case-study/casestudy4/
パルコ
パルコも生成AIを用いて成功した事例です。キリンビバレッジとの違いとしては、実在のモデルやナレーターなどを使わずに、ビジュアル・ナレーション・音楽をすべてAIにて生成した点があげられます。
この広告は店頭を中心に公開・放送されました。最先端技術を取り入れた試みが評価され、デジタルメディア協会が主催する「AMD Award」で優秀賞を獲得しています。この賞の獲得もまた話題を呼び、顧客を集めました。
商品ではなく商業施設そのものの販促ですが、話題を呼ぶことで多くの顧客を収集したことを考えると、これも店頭販促を考えるうえで重要な事例といえます。
事例URL:https://www.parco.co.jp/blog/detail/?id=678
店頭販促で顧客の購買意欲を掻き立てよう
店頭販促とは、実店舗において「商品を購入したい」という気持ち(購買意欲)をかき立てるための活動のことです。特に新型コロナウイルス感染症の流行以降、密集につながりやすい価格訴求やチラシなどの販促を行いにくいことから、店頭販促の重要性が見直されています。ターゲティングをしっかり行った上で、陳列方法を工夫したり、ポップやのぼり、ポスターなどの施策を行うと良いでしょう。






