インストアプロモーションとは?必要性や主な手法をご紹介
小売店にとって、顧客にいかにものを買ってもらうかという販売促進に関するプロモーションは、大きな課題の一つです。中でも近年、再度注目を集めているのが「インストアプロモーション」であり、店頭で行われる販売促進活動のことを指します。
今回は、インストアプロモーションの基本的な概念や必要性、主な手法についてご紹介します。

目 次
インストアプロモーションとは?
インストアプロモーションとは、店舗内で行うセールスプロモーションのこと。小売店の売り場で消費者に向けて行われる直接的な販促活動であり、店頭販促と呼ばれることもあります。売上アップのために店内で行われる広告活動、販促活動全般のことを表します。
インストアプロモーションとは、店舗内で行われるマーケティング、すなわち売上アップのための取り組み「インストアマーケティング」に含まれ、その中でも「インストアマーチャンダイジング」という売上アップにつながる具体的な取り組みのうち、棚割や陳列を工夫する「スペースマネジメント」に含まれない活動のこと、とされています。
スペースマネジメントについては、以下の記事で詳しく解説しています。
「スーパーマーケットの売場レイアウトには理由がある!品物別の法則をご紹介」
「スーパーの売り場にはどんな工夫がされている?効果的なディスプレイとは」
「売り場の陳列はなぜ重要?適切な場所の選び方をポイントで解説」
インストアプロモーションには、POPやポスター、近年ではデジタルサイネージなどを掲示するほか、スタッフが直接行うサンプリングや実演販売なども含まれます。インストアプロモーションは、店内にいる顧客を対象としていることから、既に店舗または商品に何らかの興味を持っている顧客に対して行う効率の良いプロモーションであること、また、商品の魅力をその場で実演して伝えられるプロモーションであること、の2点が強みだとされています。
インストアプロモーションの必要性
インストアプロモーションがなぜ必要なのか、3つのポイントをご紹介します。
購買体験という価値
インターネット回線や端末の発達、ECサイトの発展によってモノを安く簡単に手に入れられるようになった時代、消費者はモノの価値だけで購入を決めるわけではありません。買い物をする際にもエンターテイメント性や特別感などが重視されます。つまり、購買という一連の体験そのものが重要なのです。
インストアプロモーションでは、商品が置かれたその場で実際に商品に触れ、リアルな商品の価値を感じてもらえます。これはECサイトなどのネット販売では得られない体験です。より商品の価値を強く訴求できる方法として、インストアプロモーションが注目されています。
「ついで買い」を促せる
実際に店舗で買い物をする際、予定になかった品物を衝動的に買ってしまう「ついで買い」の確率が非常に高いとされています。比率は業態や商品のジャンルでさまざまなため一概には言えませんが、例えば牛肉売り場の隣にすき焼きのタレを置いておけば「一緒に買って今夜はすき焼きにしよう」とついで買いを促せることはよくわかるのではないでしょうか。
ついで買いを促すためには、最初に触れた棚割や陳列の工夫も大切ですが、掘り出し物を見つけた、こんな商品もあったのか、という「予想外の出会い」を演出することが重要です。そのためにインストアプロモーションが求められています。
アウトストアプロモーションが難しい
長引くコロナ禍などの影響で、密など感染症拡大につながりやすい価格訴求やチラシによるアウトストアプロモーション、すなわち「店舗に来る顧客の人数を増やすこと」が難しくなってきています。その点からも、店舗に来店した顧客に対していかにものを買ってもらうか、というインストアプロモーションに重点が置かれるようになっているのです。
インストアプロモーションの基礎について、詳しくは以下の記事を参考にしてください。
「店頭販促とは?基本の考え方と目的、方法について知ろう」
インストアプロモーションを導入すると得られるメリット
インストアプロモーションを導入すると、さまざまなメリットを得られるようになります。施策を成功させるためにも、導入により得られるメリットについて知っておきましょう。
顧客のファン化促進による売上アップ
インストアプロモーションを通じて顧客と直接コミュニケーションを取ることで、商品や店舗への理解を促せます。コミュニケーションを通じて快適な購買体験を提供できれば、顧客のファン化促進効果が期待できます。
店舗に対し「楽しく買い物ができる場所」としてのイメージが付けば、顧客のリピート購入や口コミによる集客などの、売上向上につながる効果も発生します。店舗や商品のファン化は、安定した売上を得るには欠かせない要素です。
これを取り入れられるのは、インストアプロモーションの大きなメリットといえます。
【関連記事】
顧客のファン化は売上向上に必須!ファンマーケティングを徹底解説
顧客ロイヤリティ向上
インストアプロモーションは、顧客ロイヤリティ向上にも役立ちます。施策を通して顧客とコミュニケーションを交わすことで、店舗や商品に対する理解や親近感を与えられます。
これは顧客の他店流出を予防し、長期的な関係を築くのに役立つ要素です。
この効果に加えてデジタル技術の導入や、顧客ごとにあわせた商品・サービスの提供などに力を入れれば、より顧客ロイヤリティを向上できます。
インストアプロモーションは、顧客の店舗や商品に対する信頼や忠誠心を高め、長期的な関係を築くために有効な手段です。
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ロイヤルカスタマー育成のポイントと全体の流れをおさえよう
五感をフルに活用した顧客体験の提供
インストアプロモーションは、販売時に購買体験という付加価値を与えられます。これもメリットのひとつです。
例えば、試食は商品の味や歯ごたえなどの食感を提供できるほか、手に取ってもらえなくても調理中の香りや音で商品をアピールできます。
五感をフルに活用できる購買体験を提供することで、感覚的に商品を訴求できます。顧客はより商品を知り、納得したうえで購入できます。
このメリットはこれまで解説したほかのメリットを強化する効果もあり、集客や売上向上にも有効です。
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サンプリングプロモーションとは?メリットや事例を解説
インストアプロモーションを導入するデメリット
インストアプロモーションにはさまざまな効果がありますが、必ずしもメリットを享受できるとは限りません。メリットを最大限に活かすには、導入や効果測定時に発生するデメリットにも目を向ける必要があります。
アナログな手法だと効果測定が困難
POPなどを用いたアナログなインストアプロモーションは、効果を可視化・定量化できないため効果測定が難しい傾向にあります。
このデメリットの改善には、デジタル技術を導入して顧客の購買・行動履歴などのデータを収集・分析する体制を整えなくてはなりません。
そのためには、プロモーション実施中とその後だけでなく、その前のデータも必要です。導入の際は、データ収集・分析とそれに用いる導入前のデータを必ず用意しておきましょう。
店舗ごとの施策が必要
インストアプロモーションは、店舗ごとに得られる効果が異なります。店舗ごとに最適なプロモーションを企画しなくてはならないのも、デメリットといえるでしょう。
例えば、オフィス街に設置されている店舗の場合、勤務中やその合間に立ち寄ることを考えると荷物が増えるまとめ買いなどの施策は適切ではありません。
対して、車での利用が主な立地に設置されている店舗では、荷物が増えてもお得に購入できるまとめ買い戦略はほかの店舗より有利に働きます。
インストアプロモーションを成功させるには、店舗の立地条件から連想される購買層や、購買商品数などのデータを収集・分析する必要があります。
入念な分析ができれば効果につながりますが、企業によっては実施のハードルを上げる要因となるでしょう。
アプリやプラットフォーム利用時にはコストが発生する
アプリをはじめとしたツール・プラットフォームを利用してプロモーションする場合、少なくともコストが発生します。これもデメリットのひとつです。
どんなに高い効果が期待できても、費用対効果に見合わないものでは意味がありません。このデメリットによる影響を最小限にするには、自社にとって適切な手法・費用を選ぶ必要があります。
インストアプロモーションの主な手法

インストアプロモーションの主な手法として、以下のような方法が挙げられます。
値引き、特売
インストアプロモーションの中でも非常に典型的なパターンで、スーパーで言えばタイムセール、曜日セールなどがこれに当たります。直接的に購入にかかるコストを下げることで、消費者が購入の際に感じるハードルを下げたり、安くお得に購入できる日を狙って消費計画を立てさせたりするためのものです。
値引きも特売も、その時だけの一時的な売上アップには効果的なものの、値引きが常態化すると「値引きの時に買えばいいや」と、消費者にとってその商品を購入するために妥当と判断される価格が下がってしまったり、「特売日まで待とう」と、特売前の売上が落ちたりする可能性もあることに注意しましょう。
複数購入を促す「バンドル販売」
商品を複数個まとめて購入すると割引になる、というのがバンドル販売です。1パック299円の豚肉を2パックで500円にする、などが当てはまります。お菓子などでは、3点購入すると1個無料にするなどのバンドル販売をするケースもあります。バンドル販売をすることにより、客単価を上げたり、売れ筋でない商品の在庫処分をしたりするために実施されます。
値引きや特売とは異なり、商品の本来の価格を下げるものではないため、バンドル販売が終わっても顧客が「商品が高くなった」と思うことはあまりありませんが、大量に購入させてしまうことにより買いだめを促すことにもつながるため、顧客の需要を先取りしてしまっているだけかもしれないことに注意が必要です。
増量パックを作る
商品の価格はそのままに、内容量を増やして販売する形のインストアプロモーションの手法です。いつもは8本入りの電池が2本増量、50枚入りのマスクが2枚増量、などがあります。いつもと同じ価格でより多くの商品が手にできるためお得なだけでなく、「いつもあとちょっと欲しかった」という期待や不満に応える効果も見込めます。
価格も変わらず、顧客の潜在ニーズも解消できるため非常に有効なインストアプロモーションですが、商品開発やパッケージングという根本からの対応が必要なため、小売店がしたいと思ってすぐできることではなく、メーカーが主導で行うものです。
POP
売り場で最もよく見ると言っても過言ではないPOPは、直接的に商品をアピールできる広告であり、販促物です。価格を訴求することが多いですが、店舗スタッフのイチオシポイントを書いたり、「ひな祭りにちらし寿司を」「夏の紫外線に日焼け止めを」など、提案型のPOPで消費者の潜在ニーズを開拓したりすることもあります。
また、POPに芳香剤の香りテスター、ヘアカラーの色見本などを使う体感型、体験型のPOPなら、実際の商品の使用感を感じられ、店舗ならではの購買体験に一役買ってくれるでしょう。
デジタルサイネージ
店頭に設置したディスプレイで宣伝動画や画像を流すものです。ポスターやPOPと比べて動画は視覚に強く訴えかけられるほか、より短い時間で多くの情報を伝えることもできます。自由に表示内容を操作で変更できるため、時間帯やターゲット層によって表示内容を変更できることも大きなメリットです。
一度機器を導入してしまえば、ポスターや看板のように張り替える手間がかかりません。また、表示内容と顧客のスマホアプリをリンクさせるなど、新しい購買体験を生み出すことも可能です。
デモンストレーション
商品の使い方や特徴を実演で紹介し、商品の魅力を顧客に実体験してもらうというタイプのインストアプロモーションです。試食販売もデモンストレーションの一種で、ECサイトなどでは絶対にできない、まさに実店舗ならではのプロモーション戦略と言えるでしょう。
しかし一方で、来店者とのコミュニケーションによって訴求することが必要なため、担当スタッフの教育も必要不可欠です。
プレミアム、プレゼントキャンペーン
プレミアムとは購入に対するおまけや特典のこと、プレゼントキャンペーンとは商品バーコードや応募マークなどを集めて応募してもらい、抽選で商品や賞金をプレゼントすることです。いずれも付加価値によって購買意欲を高めることが目的であり、リピート率を高めることにもつながります。ただし、プレゼントキャンペーンの場合、景品表示法による制限に注意しましょう。
インストアプロモーションによる購買体験で顧客流出を防ごう
インストアプロモーションは、店頭で消費者に向けて直接行われる販売促進活動のことで、店頭販促とも呼ばれます。顧客の購買体験が重視され、アウトストアプロモーションが難しい今、インストアプロモーションは再び注目を集めています。今回ご紹介した方法を参考に、ぜひインストアプロモーションに力を入れてみてはいかがでしょうか。
買い物にエンターテイメント性や特別感な購買という一連の体験を付与する「きゃらくるカート」導入もインストアプロモーション施策のひとつです。ぜひチェックしてみてください。






