セルフレジのメリット・デメリットとは?セルフレジの種類も知ろう
近年、さまざまなスーパーマーケットで導入が進むセルフレジ。セルフレジを導入するにあたり、メリットやデメリットにはどのようなものがあるのでしょうか。本記事では、セルフレジのメリット・デメリットを中心に、セルフレジの種類についてもご紹介します。セルフレジの導入に悩んでいる担当者の方は、ぜひチェックしてください。
目 次
セルフレジとは
セルフレジは新型コロナウイルス感染症対策の前から普及が始まっていたものの、感染症対策でさらに加速しました。
セルフレジの種類は大きく分けて、消費者自身が商品登録から会計まで行う「フルセルフレジ」と、消費者は会計だけ行う「セミセルフレジ」の2種類があります。以下で詳しく見ていきましょう。
フルセルフレジ
フルセルフレジでは、商品バーコードのスキャンから支払いまですべての動作を消費者自身が行います。一般的には、セルフレジに備え付けられたバーコードリーダーに商品のバーコードを一つひとつ読ませていくものが多いです。アパレルショップなどでは電子チップに情報を記憶させた「RFIDタグ」を商品に取り付け、消費者がセルフレジの指定位置に商品を置くと瞬時に置いた商品すべての情報が読み取れるというものもあります。
スーパーマーケットのフルセルフレジではバーコードリーダーを読み込ませるタイプが一般的で、慣れた店舗スタッフと比べると不慣れな消費者では3倍近く時間がかかってしまうといわれています。とはいえ、セルフレジの台数を増やしても店舗スタッフは複数台に対して1名の配置で良いため、レジ待ちの時間が大幅に減らせることや人手不足解消には役立つでしょう。レジ待ちの列がなくなれば、感染症対策にもなりえます。
セミセルフレジ
セミセルフレジでは、商品バーコードのスキャンは店員が行い、支払いだけを消費者自身で行います。レジに併設された精算機で支払いを行うのが一般的ですが、1台のレジでつながっているものと、店員が操作する機械と精算機が分かれているものがあります。フルセルフレジと比べると商品スキャンの時間は短縮されて消費者にストレスがかからないことなどから、導入している店舗も多いです。
しかし一方で、レジ待ちの列は相変わらずできてしまうことや、人手不足の解消にはつながらないというデメリットも存在します。会計のぶんレジの進みは早くなるものの、感染症対策としてはいまいちと言えるでしょう。
セルフレジのメリット
セルフレジのメリットについて、5つのポイントをご紹介します。
レジ待ちの時間を減らせる
フルセルフレジ、セミセルフレジのいずれも、従来の会計まですべて店舗スタッフが行うタイプのレジと比べるとレジ待ちの時間が短くなります。特にフルセルフレジの場合、消費者が商品登録をする時間は店舗スタッフが行う時間と比べると長くかかるとはいえ、フルセルフレジは台数を増やしやすいため、レジを待っている時間そのものは短くなる傾向にあります。
待ち時間は「不確実性」と「コントロールできなさ」でストレスが溜まりやすいです。その点、顧客の作業が多少長くなっても大きなストレスにはつながりにくいでしょう。登録や会計を消費者自身が行うことで、不確実な作業が消費者自身で見える、コントロールできるようになり、顧客満足度を維持しやすくなります。
回転率が上がる
特にセミセルフレジでは、慣れた店舗スタッフが商品を登録し、消費者が会計を行うことで混雑緩和と繁忙時のレジの回転率を上げやすくなります。レジの回転率が上がれば、売り上げが上がるだけでなく混雑も減って感染症対策や消費者のストレス軽減につながりやすいです。結果として、顧客満足度の向上が期待できます。フルセルフレジでも、従来のレジと比べれば同時に会計できる人数を増やすことで、回転率を上げる効果が期待できるでしょう。
接触が少なくなり、感染症対策に
接触が極力少ないのはフルセルフレジです。セミセルフレジでも金銭の受け渡しがないぶん、接触をワンステップ飛ばすことができますが、フルセルフレジではさらに商品を一度店舗スタッフが持つという接触がなくなるため、よりしっかりした感染症対策になります。
また、セルフレジの導入はキャッシュレス決済の導入にもつながります。さまざまなキャッシュレス決済に対応できるため、現金とクレジットカード以外にも決済方法を選ぶことができ、QRコード決済を選べば非接触で決済が可能になります。現金管理の手間も少なくなるという大きな店舗側のメリットにもなるでしょう。
スタッフの負担が減る
セルフレジの導入で売り上げ管理が楽になるほか、商品バーコードのスキャニング漏れなどスタッフの負担が大きく減ります。消費者自ら行う作業が増えることで、人的リソースの削減につながり、店舗スタッフの負担を削減できるでしょう。店舗スタッフのリソースが増えれば、品出しや事務作業など店舗運営にリソースを割くことができるようになります。
新しい顧客体験につながる
セルフレジは新しい顧客体験の一つでもあります。会計だけを自分で行うセミセルフレジでも、商品バーコードの登録から会計までを行うフルセルフレジでも、これまで商品登録から会計まですべてを店舗スタッフが行っていたレジとは違う体験ができるでしょう。特に子どもなどはセルフレジ自体を楽しめることも多いです。子どもを連れたファミリー層がメインターゲットとなるスーパーマーケットでは、新しい顧客体験を提供できる手段としてのセルフレジ導入も検討してみてはいかがでしょうか。
セルフレジのデメリット
一方、セルフレジには以下のようなデメリットもあります。
操作に時間がかかる
特にフルセルフレジの場合、商品登録に慣れていない顧客がストレスを感じてしまうことも十分に考えられます。また、バーコードがない商品の場合は対応が難しくなるため、後述するサポートスタッフに頼らざるを得ないこともあるでしょう。
導入にコストがかかる
セルフレジは従来のレジとは異なる機械を使うため、機器導入にどうしてもコストがかかります。費用がかかるため、セルフレジの設置台数を思うほど増やせないというケースも考えられます。費用対効果が出ている店舗も多いため、セルフレジを導入するにあたってはしっかり店舗の業務フローを見直した上で、少ない台数から導入してみてはいかがでしょうか。
サポートスタッフが必要
万引きや精算忘れ防止のためにも、操作がわからなかったときのためにも、どうしてもサポートスタッフを設置する必要はあります。
セルフレジの選び方
セルフレジは同じ種類でも細かい違いがあります。店舗にあったものを選ぶには、使いやすいレジの選び方をおさえておくことが重要です。セルフレジを選ぶときに抑えておきたいポイントを解説します。
セルフレジ導入の目的を明確化する
セルフレジにはさまざまな種類があり、業種や規模により最適な種類や機種が異なります。導入前にどのような機種を設置すれば顧客とスタッフが使いやすいかを考えましょう。
たとえば、セミセルフレジは登録機と支払い機が分かれています。効率的にレジができる一方、場所を取るためスペースが制限された店舗には不向きです。
一体型のセルフレジなら、限られたスペースでも十分活用できます。しかし、顧客がレジ操作をするため、操作に慣れていない顧客が多い店舗だとレジ回転数の低下につながる恐れがあります。また、状況により顧客対応が必要な場合もあるでしょう。
同じセルフレジでも、端末や支払い対応による違いもあります。タブレット端末を採用したセルフレジは、省スペースでも操作でき、混雑時のサブ機として活用できるのが魅力です。
キャッシュレス専用機は現金よりもスムーズに支払いを済ませられます。どちらもレジの混雑解消効果が期待できる機種です。
また、店舗拡大を目指しているなら、柔軟性や拡張性に優れたシステムを搭載している機種の方が使いやすいでしょう。
このように、一口にセルフレジといってもさまざまな種類があります。まずは店舗の規模・ほしい機能・今後の展望などを整理しましょう。整理した内容を満たすレジを選べば、セルフレジのメリットを大いに活用できるはずです。
店舗ユーザーの属性や特徴も欠かさずチェックする
セルフレジはただ導入すればよいものではありません。店舗利用者の特徴によっては導入するとかえって顧客の離脱を招いてしまう恐れがあります。導入の際は、目的だけでなく顧客の属性や特徴にも注目しましょう。
機械操作に慣れていない年配の顧客にとって、セルフレジだとかえって支払いに時間がかかってしまいます。
また、店員とのコミュニケーションを求めている顧客も多く、セルフレジのみだと店舗に対して冷たい印象を抱いてしまうでしょう。
一方、学生やビジネスマンなどは、一人当たりの購入商品数が少なく、店舗にいられる時間も限られています。有人レジやセミセルフレジよりも、自分のペースですべてできるセルフレジの方が使いやすいでしょう。
若年層や共働き層がいる場合は、セルフレジを多めに設置した方が顧客満足度を高められます。
セルフレジ導入の際は、店舗を利用する顧客の特徴に合わせて導入しましょう。たとえば、年齢層に合わせた対策として、以下の方法がそれぞれ考えられます。
【年配の顧客やレジ操作に不慣れな顧客が多い場合】
- ゆっくり支払いができるスローレジの導入
- セルフレジを導入しつつ有人レジをある程度残す
【若年層や共働き層が多い場合】
- セルフレジを有人レジよりも多く導入する
- キャッシュレス決済レジを導入する
セルフレジ導入を成功させるには、店舗を利用する顧客の特徴を捉えたうえでの対策がポイントです。どうすれば多くの顧客が満足できるかを意識して取り組みましょう。
使いやすさにも注目する
セルフレジを操作するのは、顧客だけではありません。店舗スタッフも使いやすい機種を選びましょう。スタッフがスキャンするセミセルフレジはもちろん、顧客がすべてレジ操作を行うフルセルフレジも例外ではありません。
どのレジでもエラーやミスは必ず発生します。このときにスタッフが対応できない機種だと、顧客の離脱やクレームを招いてしまいます。
通常のオペレーションだけでなく、非常時の対応も迅速にできるものを選ぶのも、セルフレジ選びのポイントです。
セルフレジの使い勝手は、操作だけでなく状況別のオペレーションをスムーズに取れるかも関わります。顧客もスタッフも使いやすいかも忘れずに確認しましょう。
運用やメンテナンス機能も忘れずに
セルフレジは導入後にメンテナンスが必要です。導入時だけでなく、運用しやすいかも欠かさずチェックしましょう。
セルフレジの運用は、レジ操作だけでなく釣銭やレシートの用意・新しい機能の追加などの操作も必要です。これらの作業がスムーズにできるかも、セルフレジの重要な機能といえます。
また、サポート体制も確認しておきましょう。故障や不具合が発生したとき、すぐ相談できるようなサポート体制が敷かれているメーカーを選びましょう。
サポート体制が不十分なメーカーから入手してしまうと、トラブルに遭遇したとき事態を悪化させてしまう恐れがあります。
セルフレジ導入の手順
セルフレジを選んだら、導入手続きに入ります。細かい部分は店舗やメーカーにより異なりますが、基本の流れは以下のように手続きします。
発注業者の選定:どのメーカーのレジを発注するかを決定・依頼する
1メーカー確認:メーカー担当者が店舗内状況を確認する
2見積もりや具体的な製品案内:店舗や要望にあった機種の案内と見積もりの確認
3発注:見積もりや製品の内容に納得したら発注する
4事前運用確認:レジ設置前に運用がスムーズにできるか確認する
5セットアップ:実際にレジを店舗内に設置する
6使用方法のレクチャー:メーカーからレジの使い方をレクチャーしてもらう
7テスト導入:店舗内で運用する条件で試験運転する
8運用開始:試験運用に問題がなければ本格的に導入する
このように、導入には手続きや試用運転が必要です。導入計画は余裕を持って行いましょう。
セルフレジ導入成功事例
セルフレジ導入を成功させるには、具体的な機種の選定や導入計画を立てる必要があります。セルフレジの導入成功事例をご紹介します。
カスミ筑波大学店
スーパーマーケット「カスミ」のひとつであるカスミ筑波大学店は、セルフレジ導入に成功した好例です。この店舗は構造上従来のレジでは3台までしか設置できず、レジ行列や接客に注力できない状況が続いていました。
カスミ筑波大学店は、ふたつのことに注目しフルセルフレジの導入に踏み切ります。
- 大学内店舗であり主に購入されるのが弁当や飲み物などで購入点数も少ない
- 客層の中心がセルフレジ操作に比較的慣れている学生層
読み取り機と支払い機一体型のフルセルフレジを、従来の3倍に当たる9台を設置しました。これにより、レジ回転数を大幅に向上させたほか、防犯対策に注力しやすい環境の構築や、現金払いのリスク減少にも成功します。
狭い店舗でもセルフレジを導入すれば、効率的なレジ業務を行えることを教えてくれる好例です。
イオングループ
全国にスーパーマーケットやショッピングモールを多数展開しているイオングループは、日本のスーパーマーケットで初めてセルフレジを導入した企業です。
2021年1月時点で全体の導入店舗数1,100店舗以上、店舗台数1万3,000台以上を利用しています。
イオングループはこれに加え、顧客自身のスマートフォンやスマートフォン型貸し出し端末を用いた「レジゴー」を導入しました。
レジゴーはセルフレジを用いることで、並ばずに会計ができるシステムです。専用アプリや端末を使って商品バーコードをスキャンし、支払いコードをセルフレジに読みこませて使います。
従来のスーパーマーケットでは、レジ業務専門従業員を雇用する必要がありました。レジゴー導入は、人件費の大幅な削減や、レジ回転数向上を実現しました。これらは顧客満足度向上にもつながっています。
セルフレジは、さまざまな効果をもたらします。イオングループの例は、レジ単体だけでなくほかのサービスと組み合わせることで、より優れた利便性を提供できることを教えてくれる例といえるでしょう。
まとめ
セルフレジにはフルセルフレジとセミセルフレジの2種類があり、商品登録も消費者が行うかどうかが異なります。セルフレジはレジ待ちの時間を減らせる、回転率を上げられる、感染症対策になるなど多くのメリットがある反面、操作に時間がかかる、導入にコストがかかるなどのデメリットもあります。導入のメリットとデメリットをよく検討し、費用対効果が十分に得られそうなら導入してみてはいかがでしょうか。