リージョナルチェーンとは?商勢圏で分けるチェーンストアの区分を知ろう
複数店舗を効率的に経営する方式として、チェーン方式があります。チェーン方式の事業運営には、チェーン店舗同士の結びつき方による区分と、チェーン店の営業範囲の違いによる区分の二つの分け方があります。今回ご紹介する「リージョナルチェーン」は、後者の営業範囲、即ち「商勢圏」によってチェーン店を区分した際に使われる言葉です。
リージョナルチェーンがどんな意味を持つ言葉なのか、以下で解説していきます。
商勢圏域で区分する場合
商勢圏とは、特定の地域における一つのチェーンが持つ勢力範囲を指します。チェーン店の運営方式をその商勢圏域で区分した場合、ローカルチェーン、リージョナルチェーン、ナショナルチェーンの三種類があります。それぞれの意味について、以下で解説していきます。
ローカルチェーン
ローカルチェーンとは、一つの商勢圏に11店舗以上出店しているチェーンストアを指します。英語の「ローカル」には「その土地の、地元の」という意味があり、多くは同一都道府県内の複数市町村をカバーする程度の範囲を商勢圏とするビジネスモデルです。
全国展開を目指すチェーン展開をスタートさせる場合でも、まずはローカルチェーンから始まることが多いです。同じ商圏に店舗を多く出店することで物流やプロモーションを効率化できます。そのため、首都圏など人口の多いエリアで多数の店舗を展開するローカルチェーンは効率が良いと言えるでしょう。
ローカルという言葉から地方を連想する人も多いかもしれませんが、展開する場所とは関係なく、首都圏に展開していてもローカルチェーンの定義に該当していれば、そのチェーンはローカルチェーンと呼ばれます。
リージョナルチェーン
「リージョナル」とは英語で「(広い)地域」を意味し、リージョナルチェーンとは2つ以上の商勢圏を持つチェーンストアのことを指します。つまり、ローカルチェーンが2つ以上あればリージョナルチェーンと言えるでしょう。1つの地域のみで店舗を展開するローカルチェーンと、全国的に店舗を展開するナショナルチェーンの中間に位置するビジネスモデルです。
それぞれの商勢圏は、隣接していなくてもリージョナルチェーンと呼ばれます。リージョナルチェーンはローカルチェーンよりも大規模に経営できるものの、ナショナルチェーンと比べて地域を絞っているため、各商勢圏に合わせた商品開発や品揃えができます。主にナショナルチェーンと比べて、地域密着型のきめ細かなサービスが可能です。
ナショナルチェーン
ナショナルチェーンとは、一般的に全国各地で店舗展開するチェーンストアのことを指します。定義では、リージョナルチェーンを複数、つまりローカルチェーンを4つ以上持っていればナショナルチェーンと呼ばれます。
英語の「ナショナル」とは「全国的な」という意味を持ちますが、単純に全国各地に店舗が点在していればよいのではなく、あくまでもリージョナルチェーンとして展開しているチェーンを2つ以上持つ形態をナショナルチェーンと呼びます。
ナショナルチェーンに属するチェーンも、ローカルチェーンからチェーン店網を徐々に拡大していってナショナルチェーンになるのが一般的です。ローカルチェーンからリージョナルチェーンを形成する際にチェーンオペレーションシステムが確立していれば、ナショナルチェーンに移行してもその販売力や管理レベルを維持しやすく、人材や資源リソースの確保が有利になります。
チェーン店同士の関係性で区分する場合
上記の区分では、同一チェーンに含まれる店舗数や、展開する商勢圏が重視されていました。一方、チェーン内の各加盟店の関係性によってチェーン方式を区分する方法もあります。その基準でチェーン店を分類した場合、それらは例えばフランチャイズチェーン、レギュラーチェーン、ボランタリーチェーンなどと呼ばれます。
- フランチャイズチェーン…商品や営業などノウハウを持つ企業が、独占販売の権利を持つ加盟店を募集する
- レギュラーチェーン…企業が自ら出資・経営する直営店をそれぞれの地域に出店する
- ボランタリーチェーン…同じ目的や志を持った加盟店が集まり、一つのグループを作る
詳しくは、以下の記事でご紹介しています。ぜひ、あわせてご確認ください。
「チェーンオペレーションとは?メリットを解説」
チェーン展開のメリット
では、ローカルチェーン、リージョナルチェーン、ナショナルチェーンというそれぞれのチェーン展開には、どのようなメリットがあるのでしょうか。
ローカルチェーンのメリット
ローカルチェーンのメリットは、1つの商勢圏内に店舗を多く展開することで物流やプロモーションを効率化できることです。同じエリアにたくさんの店舗を出店することで、プロモーションに必要以上のコストをかけなくても消費者に商品・サービスの良さをアピールでき、売上アップにつなげられます。エリアを限定することで地域に密着した商品・サービス展開ができるため、身近なチェーンとしてブランディングにもつなげやすいでしょう。
ナショナルチェーンのメリット
ナショナルチェーンのメリットは、全国展開によって知名度や信頼性がアップし、高い集客力と売上アップが期待できることです。また、全国規模で一括、大量の仕入れができてコスト削減につながるほか、商品を共同開発したり、店舗開発や物流管理、人材などのリソースを効率的に分配したりできることで、スケールメリット(規模の経済)が生まれます。
リージョナルチェーンのメリット
リージョナルチェーンのメリットは、ローカルチェーンに比べてより規模の大きな経営ができ、かつ、ナショナルチェーンと比べて地域密着型の特色ある店舗経営が可能になる点です。各地域の消費者のニーズをキャッチしやすいため、特色ある店舗展開ができ、強みを出しやすいでしょう。
ただし、ナショナルチェーンほどのスケールメリットを生かした競争優位性の獲得は見込めないことから、ある程度地元メーカーと密着したり地産地消を試みたりと、地域に寄り添った店舗展開が必要です。
まとめ
現代は消費者の好みも多様化しており、ただ事業を拡大して勢力圏を大きくすれば良いという時代ではなく、それぞれの店舗の特色を活かした経営が求められるようになってきています。従って、ローカルチェーン、リージョナルチェーン、ナショナルチェーンを単純な優劣関係で語ることはできないでしょう。これからの時代、それぞれの企業はそれぞれの経営戦略を持ち、その戦略に沿ったチェーン方式を選択するべきだと言えるのではないでしょうか。